「えーじゃあ今日はここまで。 解散ー」







銀八のやる気のない声で、今日の授業は終了した



「おい、


「んー?」

「今日、剣道部に顔出しにいくけどお前もくるか?」




トシに誘われて、引退した剣道部に足を運んだ

トシは元剣道部副部長

引退したら面倒みたくねぇ、とかいってたくせに
やっぱり後輩のことが気になるんだろうなぁ…、トシってそういうひと












「あれ?」


まだ部活が始まってから10分程度しかたってないはず

なのに部員たちは疲れきってしまっている
倒れている部員も少なくない有様だ


「なんだ?お前ら、もうへばってるってどんな練習してやがんだ?」

「ち、違いますよ…、お…おきた…先ぱ、いが…」
「総悟?」

「…おい。こいつらは俺がどうにかしておくから、、お前は中見てこい」












「総悟ー?」



道場に入れば、周りには道場の外と同じように倒れる部員たち
よろめきながら立ち向かってくる1人を鮮やかな太刀で叩き伏せ、その人は1人立っていた

その太刀筋に私は寒気を覚えた。それほど美しく、強かった。


「なんでィ もきてたんですかィ?」

総悟は私のほうを振りかえって、周りを見渡しながら言った

「こいつらじゃ、まるで相手にならねェ」
「…っ」
そう言った総悟の瞳にはいつもと違う光が宿っていた


赤く、激しく燃える光




が相手してくだせェ」








ひさびさに竹刀を持つ腕が震えた
ピリピリとした鋭くもどこか心地よい剣気


「いくよ」



竹刀がぶつかり合う





「隙だらけですぜィ、

「悪ィな これで終いさァ」
「っ!!」

振り下ろされる総悟の竹刀を避けようとしたとき、
追い詰められていた私は倒れていた部員につまずいた

「わっ!!」
「!?」

「あたたた…」
「大丈夫ですかィ?」
「あー大丈夫、大丈夫……っ…」

「…足、くじいたんですかィ?」
「……」


しばらく沈黙が続き、総悟がため息をついて私に背をむけてしゃがみこんだ

「そ、総悟?お腹痛いの?」
「…足だけじゃなくて頭もうったんですかィ?」
「?」
「どうせ歩けないんだろィ?…しょうがねェからおぶってやりまさァ」






「総悟…重くない…?」



私は総悟におんぶされて、夕暮れの道を歩いていた

、もっとダイエットしたほうがいいぜィ」
「え!?」
「冗談でさァ」
「!?」




「総悟の背中、あったかいね」


…?」

「総悟のそばって、安心す、る…」

「…、お前…」


ひさしぶりに身体を動かしたせいかな
私の意識はすでに眠りの底へと落ちていった







「まったく、心臓に悪いでさァ…」


俺は肩越しにみえるの寝顔をみてつぶやいた



心が穏やかになるのを感じた


そばにいて安心するのは自分も同じなのだと
















  「近藤さん。悪ィが今日はと帰ることになりそうだ。先に帰っててくれ」

  「そうか、わかった。を頼んだぞートシ」

  「わかってるよ」


     ただそばにいてほしい
                                  (それが嫉妬という子供じみたわがままでも)